Q.遺産相続と寄与分・特別受益について

 私は農家の長男で、病弱な父親を支えて農業をしてきました。父親が死亡したところ、嫁に行った妹が法定相続分の2分の1の権利を主張してきました。私は、この妹の要求に応じなければならないのでしょうか。また妹は、結婚するときに多額な持参金を父から貰いましたが、これはどうなりますか。

A.

(法定相続分)

 父親を看病し、農業を継いで、先祖の家と田畑を守ってきた貴方にとって、妹からこのような要求をされると、何のためにこれまで頑張って来たのかとたまらない気持ちになるでしょう。
 民法の規定では子の相続分は平等ですので、子供が二人の場合の相続分は、2分の1ずつとなります。もっとも、この民法の規定は、相続人間で任意の話し合いができないときの基準ですので、相続人間の話し合いでこの割合と違った分割をするのは自由です。
 質問の場合には、相続人間の話し合いが成立しないかったためにこのような請求がされたと思いますが、貴方と妹の取得分が平等というのでは、誰が見ても不公平で納得できないと考えるでしょう。このような場合に実質的な平等を図るために法律は「寄与分」の制度を認めています。

(寄与分の制度)

 民法は、相続人の中に「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加につき特別の寄与をした者があるときは」、遺産の中から一定の寄与分をその者に与えることを定めています(904条の2)。
 子供には親を扶養する義務がありますので、単に親の面倒をみた程度では寄与分は認められませんが、被相続人の事業への労務の提供や療養看護によって、被相続人の財産の維持、増加について特別の寄与が認められた時には、その相続人には遺産を多く配分するというのが寄与分の制度です。

(家裁の調停、審判)

 どの程度の寄与分を認めるかは、具体的事例によって違ってきます。相続人間の話合いで寄与分の割合が決められないときには、家庭裁判所に調停を申し立てて話し合います。調停で合意できないときには、裁判官が審判で寄与分の割合を決めます。寄与分の割合が決まると、遺産の中から、まず貴方が一定の財産を取得し、残りを2分の1ずつ分割するということになります。

(持参金と特別受益)

 妹が結婚したときに父親が相当多額の持参金を持たせたような場合には、遺産分割の時にこの持参金分も遺産の対象に加えて相続分の割合を算出し、その中から持参金分を控除した残額が妹の取得分になります。これが一般に特別受益といわれるものです。
 要するに、被相続人から生前に婚姻や生計の資本として贈与を受けた者がいる場合には、遺産分割の時にこの分を再計算する制度で、これも相続人間の平等を図ったものです。もっとも、特別受益の方が相続分よりも多い場合には、相続で取得する分がゼロになるだけで、返還を求められることはありません。

(公平・平等な遺産分割のために)

 寄与分と特別受益の制度は、いずれも遺産分割の際の公平・平等を意図した制度ですが、何をもって公平・平等かはその人によって見方が違いますので、相続人間で争いが起こって、「相続」が「争族」になってしまうことがあります。このようにならないように、日頃から互いに人間的な交際を心がけることが大切です。しかし、残念ながら相続で争いが起きてしまった時には、家庭裁判所に調停を申し立て、調停委員のアドバイスを受けて解決したら良いと思います。調停は法的手続きの一つですが、話し合いの延長ですので、気軽に利用したらよいと思います。