Q.遺産内容の調査と遺留分減殺請求について

 父が亡くなりましたが、長男の兄が父の遺言があったとして、勝手に預金を払い戻したり不動産の移転登記をしていますが、このようなことが認められるのですか。また父の遺産の内訳を知る方法、それに私に認められる権利について教えて下さい。

A.

(公正証書遺言による執行)

 おそらく、お父さんは生前に公証役場で公正証書遺言を作っていたものと思われます。この公正証書遺言の内容で、一切の遺産を長男に相続させる旨が記載されていますと、長男は、他の相続人の同意を得ないで、不動産の名義変更や預貯金の払い戻しが認められるのです。
 遺言でも、全文を自分で書いた自筆証書遺言の場合には、家庭裁判所の検認の手続きが必要となります。この機会に、他の相続人は遺言の内容を確認できるのですか、公正証書遺言の場合には検認が不要です。このため、長男は他の相続人に遺産の内容を全く知らせずに父親の遺産を相続できるのです。
 もし、他の相続人が公正証書遺言を確認したいときには、相続人であることを証明する資料を持参して公証人役場に行くと、公正証書を閲覧し内容を確認することができ、コピーももらうこともできます。

(遺産内容の開示の要求)

 次に、遺産の内容の確認ですが、公正証書遺言の中には不動産や預貯金などが具体的に記載されている訳ではありません。長男が遺言の執行者に指定されている時には、遺言執行者は遺産目録を作成し開示する義務があります(民法1011条)ので、これを要求したらよいでしょう。
 それでも、長男が遺産の内容を開示しないときには、不動産については市役所等の税務課に、預貯金については金融機関に対して、父親の不動産や預貯金の有無、内容を問い合わせたらよいでしょう。
これまで金融機関は、個人情報の保護などを理由に父親の預貯金の内訳を開示するには相続人全員の同意が必要としていましたが、平成21年1月22日に、相続人にはこの権利が認められるとした最高裁判決が出されましたので、現在は相続人単独で預貯金の有無、内容の照会に応じています。

(遺留分減殺の請求)

 また、長男が父親の遺産を独り占めすることに納得できない場合には、質問者や他の相続人には遺留分減殺の請求が認められます。この場合に認められる遺留分は、法定相続分の2分の1です。子供3人が相続人とすると、遺言がない場合の法定相続分は3分の1ですが、長男に全財産を相続させる旨の内容の遺言がある場合の遺留分は6分の1になります。
 遺留分減殺請求は、遺留分を侵害されたことを知ってから1年以内に行使しないとき、又は被相続人が亡くなって相続が開始した時から10年を経過した時には、時効で消滅します。したがって、遺留分を侵害されたことを知ったときには、早めに権利の行使をすべきです。そして、この権利を行使する時には、権利を行使したことを明確に残すために内容証明郵便で通知することをお勧めします。
 この権利を行使しても長男が遺産の分割に応じないときには、家庭裁判所に調停の申立をしたらよいでしょう。調停でも話し合いがつかないときには民事訴訟ということになります。
遺産をめぐる争いは、感情的対立が激しくなり解決が難しいことが多いですが、身内の争いですのでお互いに譲り合ってできるだけ円満な解決をしたいものです。